鄭道聰氏は台南市文化協会の理事長として、台南の歴史や文化の保存などに関わっている人のようだ。そしてこの本の印税は、總趕宮の修復費用に宛てられるという。ちょっと高いような気がしたけれど、まぁそれなら一石二鳥で良しというところ。
本の内容は、小西門を見上げながら生まれ育った少年「阿俊」が、台南の街の移り変わりを語っていくもの。小西門は国民党時代に道路拡幅のため取り壊された(一応、成功大学に移築)。激しく変化する街の象徴をタイトルにしたようである(私の中文読解力には限界があることを断わっておきます)。
この本の面白さは、日本との関係、外省人との関係、国民党との関係、そういったものを感覚的に知ることができる点にあろう。それはまさしく少年の目を通して、少年の体験として描いているからに他ならない。
特に外省人絡みのエピソードは、一介の観光客に過ぎない我々には分からない微妙な関係性が読めた。これだけでも買う価値がある。
もちろん、台南にまつわる古い写真など資料的価値もある。洋食屋「カピタン」の写真は印象に残った。
そして最後に衝撃の「鄭成功の頌」である。台湾の学校で歌わされた唱歌の存在は、全く知らなかった。歌詞を知りたい人は是非この本を買って欲しいので、あまり細かくは紹介しないが、八番(最後)の歌詞を読むと、鄭成功の遺志を継いだのが台湾総督府だ、という物語がみえてくる。
台南に関する知識が全くない人が読むには辛いだろうが、一度でも歩いたことのある旅行者にとっては、必ず何かの発見があるはず。是非買おう。
八
志業はついに成らざれど 明治の御代の御光に
君の偉功は現れて 開山神社の月清し
(『公学校唱歌』より「鄭成功の頌」)
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