2009/05/12
法華寺(台南市)
大乗仏教のあるところ法華寺あり。台南の法華寺は、鄭氏に仕えていた李茂春の隠居していた夢蝶園が始まりだそうな。
清の時代に立派な寺になって栄えたが、やがて衰微。トドメは連合国軍の空襲だったという。すっかり焼け落ちた地に、可能な限り古式に則った堂宇を再建したのが現在の姿である。
ど派手な廟だらけの台南で、こういうシンプルな建築を見るとほっとするのは確か。ただし、記憶に残りにくいというのも、また事実であった。
前殿にあたる天王殿には、左右に二体ずつ何やら祀られている。いわゆる金剛力士や四天王にしては、持ち物が不審である。
しかも彼らは無慈悲にもオッサンを踏みつけているのだ。いったいこれは何だ?
ガイドなどの説明によると、この四体の像は「風調雨順」の寓意を示すそうで、踏みつけられているのは、その辺のオッサンではなく酒・色・財・気を象徴する悪鬼であるという。むぅ、まさにその辺のオッサンじゃないか。
四体といいつつ二体しか載せていなかったので追加。
中心となる大雄宝殿。釈尊を祀る。
日本と違って、撮影を断わられることはまずないが、だからといってちゃんと撮れるとは限らない。天井の蛍光灯を消してくれとは頼めないからねぇ(頼めるだけの理由はない)。
後殿。観世音菩薩を祀る。
正面に賽銭箱が見える。日式の賽銭箱を台南で見たのはこれが唯一だった気がする。
観音は台湾によくある普陀巌である。
なお境内には関帝や土地公も祀られているのだが、いわゆる台湾的な廟の空気はない。ここは間違いなく寺院である。
ここは後殿の隣にある庭と聚賢堂。
聚賢堂には、当初の主であった李茂春の位牌が祀られる。
天王殿の門神。潘麗水の作品である。
現在の建物は第二次世界大戦後の再建であり、鉄筋コンクリートが中心となっている。
それでもできるだけ昔の雰囲気を再現したそうな。いかにも禅宗な空気である。
現在は曹洞宗らしい。もうちょっと緑があればなぁと思うが、まぁ寺院としての評価ではないのでこの辺で終わる。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
はじめまして、あまりに多くて、精読できず、興味深く管見しています。天王堂の二体の尊像ですが、左はヴィーナを持っているので、弁才天でしょうね。台湾なのでインドと関係あるかわかりませんが、インドでは弁才天(サラスヴァティー)の夫は梵天だとされていますから、右は梵天かもしれませんが、邪鬼をふんでいるとのことで、梵天ではないかもしれません。私の知る限り、邪鬼を踏んでいるのは、インドではバールフトのヤクシー女神像か、日本の各種四天王だけです。ただし、台湾のこれはほんとにおっさんで、邪鬼には見えませんね。関係あるかどうかわかりませんが、西域伝来の東寺の兜跋毘沙門天は邪鬼のような小人を従えた地母神が毘沙門天の両足を支えています。まだ中国では四天王が邪鬼を踏むということが定着していなかったのですね。
返信削除だから、中国からの影響と思われる台湾のこれらの尊像の邪鬼は、日本の図像の伝統とは関係なく、独自に形成されたものであり、ガイドの説明しているように理解しておいたらいい様に思います。ほかにもいろいろと面白いのですが、コメントする時間がありません。失礼します。
>随念院さん
返信削除はじめまして(いつも相方が世話になっております)。こんな適当なブログにお越しいただきありがとうございます。
また、写真からの詳細な分析も、感謝感激です(せっかくですので残り二体の写真も載せました)。邪鬼を踏む形はそれなりに普遍的なものかと思っていたので、勉強になります。
東寺の兜跋毘沙門天といえば、羅城門の上にあったという伝承の像ですね。だいぶ前に見たことはあるのですが、もう一度しっかり確認しなくては。
ちなみに、この四体は彌勒菩薩像の左右に並んでいます(彌勒といっても、沖縄のミルク神みたいな風貌です)。同様の形は翌日に訪れた開元寺でも見かけました。
手元の康鍩錫『台湾廟宇図鑑』には開元寺の項があり、琵琶を手にした白い顔の像を「東方持国天」と紹介しています。四天王も所変わればってことなんでしょうか。
4体あるんですか。弥勒菩薩を護る四天王ですか。それなら弁才天に似ていますが違うのですね。邪鬼を踏む意味もわかりますが、日本の四天王とは違いますね。持国天が弁才天のような女性形であるのは興味あるところです。台湾の仏教は道教や土俗信仰も入っているでしょうし、日本の図像の常識では理解できないところがありますね。仏教世界も広いということがよく分かりました。
返信削除>随念院さん
返信削除分かりにくい記事ですみません。おっしゃる通り、仏教世界は広いですね。
とりあえず『台灣佛教美術』シリーズなど数冊を注文してみました。もう少し学んでみようかと思います。