2016/08/31

「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」第8話まで

 一家で観賞中の「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」。hashiおよびtomopeeの一番人気は殺無生。幼児が最も憧れてほしくない職業の人だぜ。
 まぁ仮面ライダーにしても、実質は似たようなものだから(最近は神になったり幽霊になったりロクな目に遭わない)、深刻に考えるようなことではないのかも知れない。無生は、人殺し以外は好人物なわけで(ツッコミ無用)。


※以下はネタバレ妄想。読む価値はない。


















 鬼鳥の素性は予想通り。というか、蔑天骸や刑亥や無生が既に散々口にしていたわけで、あくまで不患と丹翡(ついでにケンちゃん)が知らなかっただけだ。
 「掠風竊塵」から泥棒以外の何かを想定するのは難しい。
 唯一はっきりしたのは、不患は凜雪鴉に用があって東幽に渡ったわけではない、ということか。まぁ無生に「聞いたことは?」と尋ねられた時点でほぼ確定していたが。

 掠風竊塵がどのような怪盗なのかは、次回以降明らかになろう。
 まず、狩雲霄が仲間に加わった理由。彼は怨恨なしに、しかも怪盗と知っていながら助力している。ここ3回、狩雲霄が不患を疑う場面が続いているのは、彼自身に対する疑念から目をそらさせるためだろう。
 この点は、次回にも語られるのでは。少なくとも、ケンちゃんが疑問に思うはずだし。

 掠風竊塵の過去の仕事に関しては、まぁその辺で語られるとして、問題は今回の任務である。
 まず、彼は不患と丹翡を裏切ったわけではないだろう。二人を戦わせた理由は、彼が言う通りだし、丹翡の意識をもうろうとさせて捕えさせたのも、やはり丹翡を助けるためと解釈できる。
 不患がついていれば、牢屋からの脱出はできるし、魑翼の扱い方も教えたので逃げられるだろう。

 まぁ掠風竊塵は、ある程度は計算しつつ、出たとこ勝負でやっている感じ(その辺はルパン三世に似ているといえば似ている)。
 7話で不患を試した際は、本気を出さないメンバーに同調しつつ、不患が腹を立てて単独行動に出ることを予測したはずだ(まさしく無策無謀がならわしの男だと、視聴者も承知している)。
 その時点で魑翼を手に入れる確信があったかは分からないが、あそこで別行動をとれば、無生との約束は反故になる。先に書いたような丹翡の保護も、無生らが同行していれば却って困難になろう。

 いずれにせよ、今度は蔑天骸も「仲間」に加えて、ひとまず山を下りるはず。そうして鍛劍祠に着いて何をするのか。不患の役目はここでの、にわかには引き受けがたい何かだろう。
 ここ数回の雰囲気で、登場人物はあまり死なないような気がしてきたので、「自分を斬れ」的な役目ではなさそう。素直に考えれば、天刑劍を折ることだろうが……。


 もう一つ、不患の素性も少しは見えてきたような気がする。
 地下牢にいた経験あり、剣に迷った経験あり。そして「俺が選んで俺が斬る」と言う台詞は、かつてそうではなかったことを意味していよう。となると、たとえば王に雇われた暗殺者みたいな像が浮かぶ。
 鬼歿之地を越えるのは、そうした過去の自分に対する擬死再生儀礼なのかも。
 まぁ魔方陣からはじき出されたことによる「実は死人」説も、現時点で否定するだけの根拠はない。私はそうは思わないが。

 不患の実力論議も面白い。狩雲霄、刑亥と無生の会話は噛み合っていない。少なくとも無生は、不患が戦いに消極的なのを知っているし、もっと言えば不患も手抜きをしていたと認識していよう(二人が手抜きをしていたことは、不患も知っていたはず)。
 まぁその辺の「俺は知ってるぜ」ニュアンスが、無生の「不患」呼びだったのでは。その腕を評価しない相手を下の名で呼びはしないだろう。

 そんなこんなで、くだらない妄想がはかどる快作なのでみんな見ようぜ。
 念白の、中学生漢文って感じのノリと言い、良い意味でガキ臭い世界だ。誰が一番強いだろうなんて、恥ずかしい議論ができる。現時点で一番強そうなヤツにちゃんと目をつける、我が5歳の息子もほめておきたい。

2016/08/06

「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」第5話まで

 日台合作の「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」は、早くも5話まで放送。残り8話しかない。
 毎回、実質24分ほどがあっという間に過ぎる。あの緊張感は、アニメでは出ない気がする。明らかにアニメ寄りのキャラであっても、実写の画面で対峙しているという点が大きいのかも知れない。
 動画サイトでだいたい扱っているので、今からでも見てほしいものだ。



※ネタバレ















 5話の見所はサシで呑む場面に尽きる。よくよく考えれば無茶苦茶な内容を自信たっぷりに語る殺無生は、一方で殤不患に関する重大な情報を聞き出している。
 とりあえず斬るが信条の殺無生が、「生前」の殤不患に出自を問うのは、もちろん彼を好敵手と認めたからだし、それまではぐらかしていた不患が答えたのも同様。その後の経過も含めて、名場面だった。

 殤不患が西幽の出身であることを知る者は、現時点で恐らく二人。鬼鳥は少なくとも感づいていようし、事前に知っていた可能性も(現時点では)否定できない。
 その上で、本日時点での最大の謎は、その鬼鳥が殤不患に求める役目ということになる。あの言い方からして、通常ならば殤不患が必ず断わるようなことだろう。ただし、いざその場面になれば、引き受けると確信していることも間違いない。

 すぐに思いつく役目、つまり「蔑天骸を倒す」は、たぶん違う。そんなことを秘密にする意味はない。
 天刑剣の使用に関する役目というのは、ありうる。少なくとも、鬼鳥が丹翡のために動いているわけではないことは確実だろう。ただし現時点では情報が少なすぎて、それ以上は推測しようがないが。
 ちなみに、蔑天骸も天刑剣の本当の価値を知っているはず。刀剣コレクターというのは、所詮は目眩ましの情報と思われる。玄鬼宗は頭と配下との力量の差がありすぎるので、配下に真意は伝わっていないだろう。

 もう一つは、誰かの殺害。丹翡の殺害は、殤不患が受けるとは思えないのでナシ。ありうるのは鬼鳥自身の殺害依頼か。
 もちろんその場合は、鬼鳥が殺されなければならないという理由が、明確に説明される必要がある。現時点では全く説明不可能だが、今後の展開次第ではゼロではあるまい。

 あとは殤不患の旅の目的が、どのように明らかになっていくかであろう。急いでいたはずの彼が、鬼鳥につき合っているのは、単なる「義理」からなのだろうか。
 まぁ、そんな妄想も楽しいので早く第6話が見たいゾ。ただし、お盆の帰省のために、リアルタイムで見れない……。

笑傲江湖の思ひ出

 「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」を見ていると、かつて我が家が武侠ブームだった頃を思い出す。まだ台湾に行く予定もなかった2006年頃だ。
 当時、CSで「笑傲江湖」を放送していた。もちろん李亜鵬版である。巷では賛否両論だったらしいけど、私は彼が演じる令狐冲がとても楽しかった。江湖の好漢のイメージは、今も彼が演じた姿だ。


 ……とはいえ、それしか見ずに一番と断定するのもどうか。原書の日本語訳も読んだ上で、当時見ることのできた他の令狐冲と比較しても、やはり李亜鵬じゃねーの、と思う。
 まぁ古いバージョンはそれ以前に、全体的に暗い。武侠ドラマそのものが暗さをまとっていたし、どうしても陰陽(正邪)の対比から衣装が黒か白になるという構造的な問題もある。
 中央電子台の笑傲江湖は、その辺をようやく脱したものだったのよね。

 令狐冲を比較するとか言いつつ、以下はほぼ令狐冲なしだが、当時見た映像の一部など。

 たぶん、今となってはレアな1984年チョウ・ユンファ版。これは小師妹と寧中則の母子である。derorenは先に苗乙乙で見てしまったので、小師妹の垢抜けなさに驚いた。

 もっとも、チョウ・ユンファ版の凄さは衣装ではないだろう。
 ここに映っているのは曲洋。言わずと知れた「笑傲江湖」演奏シーンなのだが、琴から何やら光線が発射されている。

 こちらは劉正風。
 ちなみに、この場面で流れているのは琴でも簫でもなく、チープな電子音なのだ。

 両者の音色はさまざまな光線となって、洞窟を破壊する。
 そもそもこの洞窟に、両者は空を飛んで入ってくるのだ。

 現在「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」を見ている人ならば、今さらこんな三十数年前の話をする理由も分かるだろう。
 そう、人を斬ると爆発するような布袋戯の世界も、こうした武侠ドラマの歴史を見れば必然の流れなのだ。「笑傲江湖」作者の金庸は、こうしたメチャクチャな映像化に腹を立てていたようだが、だから原作重視で、とはいかなかった模様。

 だいいち、東方不敗を女性が演じたこと自体、原作からすればあり得ない話。まして、東方不敗と令狐冲の交流など、あるわけがない。
 しかし映画でそれをやったら当たったものだから、2000年のシンガポール版、そして最近の新笑傲江湖と、令狐冲の浮気相手みたいな役割が定着している。シンガポール版は、もちろん兜をかぶっているゾ。

 1996年の呂頌賢版は過渡期という感じ。1984年版のように無茶苦茶ではないが、地味だ。
 これは思過崖に行けと命じられる場面と思われる。

 シンガポール版は、すっかり明るいノリだ。といいつつ、冲霊剣法の場面なのだが。
 このシンガポール版では、東方不敗が「トントクーニャン」と呼ばれて終始登場する他にも、いくつか原作との大きな相違点がある(エンディングが原作通りのドラマはほぼ皆無なのでさておく)。
 藍鳳凰と田伯光をくっつけたのは何なんだよ、と今でも納得できない。


 まぁそんな昔話はさておき、「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」は面白いぞ(おそらく別に記事を書くだろう)。グダグダに終わるという武侠モノのお約束さえ回避できれば、言うことなしだ。