2012/05/12

龍山寺(台南市東門路)

東門路を歩くに当たって、derorenはいくつかのガイドブックを参照した。と同時に、googleストリートビューも積極的に活用している。
 そこで旧東門美術館の周辺を見ていたら、近くに何やらあるらしいことが分かった。それ自体は奥まった場所で、ストリートビューの車も通らなかったようだが、ともかく見つけた以上は行くしかない。

龍山寺(台南市東門路)
 東門路を折れてみれば、この景色。全景が見えないぜ。まるで新田駅みたいだぜ(ローカル過ぎ)。

 ……説明しようと思ったが、余所のサイトでいい写真が見つからないぞ。

新田駅
 なので自前で載せてみるべ。
※新田車站(JR西日本・奈良線)1896年1月開業(舊奈良鐵道)
 遮住驛舍的大樹,是銀杏和辛夷。

龍山寺(台南市東門路)
 うむ。どうでもいい譬えで話がそれてしまった。毎度のことだが申し訳ない。
 ここは龍山寺。台湾旅行の経験があれば、この名前を聞いたことはあるだろう。ただし台北の龍山寺だろうが。

 龍山寺は福建省泉州の移民が建てた集会所みたいなものなので、台湾各地にある。一般に有名なのは台北艋舺(萬華)、また文化財的価値では鹿港龍山寺(国定古蹟)が挙げられる。そして台南にも、もちろんある。
 もっとも、台南の龍山寺といえば普通はここではなく、市の南部の海沿いにある四鯤鯓の寺を指す。少なくともderorenは、ストリートビューを見るまで、ここの存在は全く知らなかった。

 なおここの龍山寺は、寺伝に拠れば1715年(康煕54年)、大東門近くに祀ったのが始まりらしい。当初は老古石(要するにサンゴ)で建てた簡易的なもので、やがて朽ち果てたが、乾隆年間にちゃんとした社殿を建て直したという。
 そうして存続していた寺は、日本統治時期に大東路が拡張されたため、移転を余儀なくされた。その移転先がここらしい。

龍山寺(台南市東門路)
 いずれにせよ、現在の建物は、見るからに新しい。しかも階段がきつくて、tomopeeをベビーカーに乗せている我々にとっては、あまり入りやすい場所ではなかった。
 そこで、derorenが代表して拝むことにした。
 ……しかしそれは、これからの出来事の始まりに過ぎなかったのだっ。


 とりあえず階段を昇って一階を見渡すと、写真のように観音像が安置されている。ツカツカ歩いていったderorenは、さっと拝拝しようと思ったら、右手側から声を掛けられた。そこには、何とも人の良さそうな尼僧が笑顔で立っていた。
 尼僧は、まぁこれを飲みなさいという感じでコップを渡して、何か冷えた飲み物を注いでくれる。それは楊桃湯で、かなり美味だ。たぶん、今まで飲んだ楊桃湯で一番良かったと思う。

 ありがたいありがたい……と、ぺこぺこ頭を下げてderorenはその場を立ち去ろうとするが、その尼僧はまだ何か言いたげだった。
 しかし、言いたげなまま奥にひっこんで、しばらく戻って来ない。さすがにもういいだろうと、derorenは外に出る。hashiとtomopeeが木陰で待っているので、長居はできないのだ。

 ……が、そうして木陰でうだうだしているうちに、尼僧が現れた。彼女はtomopeeを発見してしまった。

龍山寺(台南市東門路)
 日本でもtomopeeは可愛いと評判だが(親バカ発言)、台南での人気もかなりなものだった。前日の西華堂に続いて、ここでも彼は尼僧を虜にしてしまう。
 荷物搬入路を通ってベビーカーごと入堂した我々は、農民暦を渡される(龍山寺のガイドを兼ねている)。そして尼僧の案内で、鉄筋三階建の堂内を巡り、そこに居られる仏を拝拝することになった。
 まぁ何というか、可愛いって罪よね。(読者の皆さん、怒っちゃイヤヨ)

 なお、写真はお菓子をもらったtomopee。ただし、このお菓子は彼には食えないので、帰国後に親が食べたゾ。

龍山寺(台南市東門路)
 二階は釈迦三尊。素木の一木造で、新しいがかなり手の込んだ仏像だと分かる。
 尼僧は、農民暦の表紙を指差した。そこには、切口が直径2mはくだらない樟の巨木が写っていた。これは大陸から運ばれたご神木らしい。

 同じ農民暦の寺伝によれば、2000年に龍山寺は火事に遭い、1982年に建てたばかりの鉄筋三階建てのうち、2階と3階を焼失してしまったという。
 そこで改めて立派な木を探して、掘り直して法要を行い安置したのが、現在の姿なのである。

龍山寺(台南市東門路)
 三階には千手観音像。
 これがもう、君は千手観音♪とかふざける気にもなれないほど立派な像だ。

龍山寺(台南市東門路)
 まぁしかし、日本にも本当に千手な菩薩はいくつか存在するけど、実際に見るとやはり驚かされる。何というか、この執念が菩薩の実在を保証していく様を追体験するような。
 もちろん、そこまでヘヴィな立場になくとも、一つ一つの造型を眺めるだけで楽しい。異国の来訪者を、無理矢理にでもここまで引きあげるのも、なるほどと思う。いいものを見た。感謝。

龍山寺(台南市東門路)
 一階に戻ると、尼僧は沢山のお土産を手渡してくれた。そして、左手で休んでいた別の老尼僧がtomopeeを呼び寄せて、日本語で「きれい」と褒めてくれたのだ。derorenとhashiは恐縮しつつも鼻高々である。
 写真は、いただいたものを別の場所で撮影したもの。既に紹介した蛋黄果も、ここでもらった。他にグァバとバナナ、漬け物、菓子、飲み物などで、いきなりderorenのリュックがパンパンになるほどだ。如何に歓迎していただいたか、この量でも分かるだろう。

 ちなみに、漬け物などはこの日の昼食時などに食べた。またバナナはtomopeeのおやつとして、帰国日の空港まで役に立った。で、お菓子だけは国境を越えて日本に持ち込まれている。日本のお菓子と似ているようで、どこか違う(味は……)。

龍山寺(台南市東門路)
 さて、そんな中に楊桃湯と思われる一本があった。
 堂内で飲んだものがとても美味しかったので、これも喜んでいただいたわけだが、ホテルの冷蔵庫に入れた後に、さぁ飲もうと思ったら、何か様子がおかしい。
 そう、明らかに醗酵しているのだ。

 まぁ醗酵そのものは驚くことではない。とはいえ、部屋で開けると中身が飛び出す可能性は否定できないので、とりあえず洗面台に移動してみた。
 恐る恐る蓋を開けようとすると………、ものすごい音とともに蓋はどこかへ消えた。そして、これもものすごい勢いで液体が飛び出して、洗面台はとんでもない惨状を呈すに至ったのだ。
 後で見渡してみると、飛沫は浴槽など部屋中についていた。まさしく大爆発だ。知らずに、外で開けたらどんなことになっただろう。derorenのシャツや髪の毛が被害にあっただけなのは、不幸中の幸いであった。

 そうして事件が起きた後に、こうやって写真を見ると、既にやばそうだったことが分かる。自分が飲んだものと違うボトルだけど、試飲した気になっていたから疑問に思わなかった。慌ててタオルで拭きながら、ちょっとだけ反省した。

 ともあれ、そんな後日談も含めて、とても印象に残った出逢いだった。龍山寺の尼僧の皆さんに、改めて感謝申し上げる。

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