旅行前に大量の本を買ったことは、以前の記事でまとめてある(
その1・
その2)。普通の旅行者ならこれでも多いのだろうが、たぶん私は普通の範疇には入らないので、帰国後もまだ買い続けている。それらの中には、旅行前に買うべきだった本も少なからず含まれている。
ここでは台北の書店で買ったり、帰国後にまた通販で取り寄せたりした本について紹介する。☆は2009年夏旅行に持参した本である。
※2010年1月にいろいろ情報追加。
役に立った本から紹介するので、気になったら通販で買うべし(
通販の方法はこちら)。
現地で書店に行くのも悪くはないが、基本的にはホテルの近くに大型書店があって、そこが夕食後の時間でも営業している場合に限る。
わずかな旅行期間において、ガイドを買ったり読んだりする時間は基本的に無駄だと思う。ガイドは出かける前に読むものでしょ?
もう一つ。以下で紹介する本はすべて台湾の出版物であり、日本語では書かれていない。だから自分には無理だと思う皆さんに言っておくけれど、紹介する私自身は北京語も台湾語も全く話せない。
話せなくとも、読むことは出来る。発音がいくら変わっても、基本的に「漢文」なのだし、ましてガイドなら言語が違っても似たような情報が載るのである。写真と地名は誰でも読めるから、あとはページをめくりながら慣れれば良い。
台湾出版物を使いこなせれば、台南に関する情報量は無限に増やすことが出来る。旅が好きなら何も苦痛ではないはずだ。単に飯食えばいいって人種は知らないけどさ。
☆『台南歴史深度旅遊』(上・下)(遠流台湾館2003.2) 元は『台南歴史散歩』として出版されていたものを改題。元の方は知らないのでどの程度内容が変わったのかは不明だが、データは多少新しくなっているはず。
基本的にこれは、歴史的知識に重きをおいたガイドブックである(山川出版社の「○○県の歴史散歩」シリーズみたいなものを想像すると良いかも)。ちゃんと地図もあるし、なんと小吃店の紹介ページもあったりする。
ただし何せ2003年刊なのでデータは古い。せめて毎年データを更新しないとガイドとは言えんなぁ、ともぞもぞと苦言を呈してみる。
この本は上下巻なので携帯するには重い。現地で読むにはどうかなぁと思うが、事前学習には最適である。
いや、可能ならば現地にも持っていきたい。著名な寺廟については内部配置図もあるので、見所の確認に役立つ。実際、今回の旅行ではあちこち見逃しが多かった。ごちゃごちゃした寺廟を的確に見学したいなら必携だ。
事前・事後学習にも良い。二冊で800NT$の価値はじゅうぶんにある。
※追加
読み始めた時から気になっていたが、どうもこのガイドは「日治時代」を悪く書く傾向がある。というか、出来事への評価云々以前に、日本統治時期の出来事をきちんと記さないのだ。
なので前後との整合性に難のあったりする部分も見られる。大天后宮などは日本統治時期にいろいろ事件があったが、日本を悪く書けるもののみを取り上げ、台湾内での宗教対立などは端折られている。その意味では信用出来かねる面がある。
歴史は政治の産物として作られる物語だ。なので国民党寄りの歴史が書かれること自体は、国民党が支配者である限り当然ではある。しかしそういうバイアスに気付かずに騙される不幸からは逃れたいものだ。
※追加2。八月はこれを持参した。重いがやはり便利である。
●董芳苑『台湾人的神明』(前衛出版社2008.12) 台湾の寺廟で祀られる神々を、仏教・儒教・伝説神などに区分しつつ解説する。台湾での信仰に特化しているので、非常に分かりやすい。この人(神)誰だろうって時に使える、辞書みたいな本である。
最後の方にはキリストやムハンマドまで載っているぞ。まぁ開元寺の開山堂に延平郡王(鄭成功)と弘法大師が並んでいるぐらいだから、驚きはしないけど。
日本語表記ではないし、ある程度そういう資料に読み慣れている必要はある。この本自体が入門書ではあるものの、さらに簡単な入門書(観光ガイドなど)で知識を得た方が良いと思われる。たとえば上で紹介したガイドなど。
なお、著者の政治的立場はある程度窺えるが、書物の内容自体は比較的信頼出来そうだ。現在起こりつつある信仰が触れられる点も評価出来る。本ブログの記事にはかなり役だった本。
●陳清香『台湾仏教美術(Ⅰ)供像篇』(藝術家出版社2008.11) シリーズ三冊で、それぞれ供像篇・建築篇・繪畫篇となっている。
「仏教美術」ということで、信仰の側面にはほとんど触れられていないし、特に絵画篇は画集の域を出ない。美術品として見たい人以外には必要ないと思う。
ただ、こういう形で見渡すと、台湾仏教の歴史の浅さだけは良く判るはず。遅れて届いた地域だから、信仰が生きているように見えるのかなぁ、そんな感想だ。
●康諾錫『台湾廟宇図鑑』(猫頭鷹出版2004.2) 例によって博客来のリンクを貼っておくが、台北市内の書店で購入した。ちなみに、買ったのは私ではなく相方である。
内容は台湾の著名な廟宇のガイドであるが、冒頭で廟の建築についての概説されており便利。
取り上げられる寺廟は台北・鹿港。鳳山の龍山寺、鹿港・澎湖の天后宮などで、いずれもかなりのページを割いて紹介されている。今回我々が訪れた地では、台北龍山寺、台南の開元寺、祀典武廟、大天后宮、孔子廟が掲載されている。
なお、日本の書店では3840円なんてビックリ価格が付けられているようだ。博客来なら(他にも日本発送OKの書店あり)送料込でせいぜい2300円程度じゃなかろうか。
●黄柏芸『台湾的城隍廟』(遠足文化2006.2) 作者は黄氏(最後の字は「げい」じゃなくて「うん」)だが、林茂賢(静宜大学)が監修している。文字通り城隍廟オンリーのガイドで、最初に城隍神信仰の概説、続いて官祀の廟、民間の廟の順で、台湾各地の城隍廟が紹介される。
台南では府城隍廟、縣城隍廟、安平城隍廟(いずれも官祀)を掲載。解説もそこそこ詳しく読んで役に立つ。古地図(そのものではないが)での位置関係もきちんと載っていて良い。城隍廟は位置が重要なので。
また、わずかではあるが城隍廟と東嶽殿の関係を説明したページがある。城隍廟を知るなら買っておきたい。これも記事を書く際に重宝している。