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2010/10/01

総趕宮(一) 国父信仰の爪痕

總趕宮
 総趕宮は倪聖公(總趕爺)という神を祀る廟である。その起源は諸説あって、明の永暦年間とも、清の康煕年間とも言われるが、いずれにせよ台南でも古い歴史をもつ宮だ。
 『台南歴史深度旅遊』によれば、当初は聖公宮だったのが康煕年間に総管宮となり、清朝末期には総趕宮と変わったという。管と趕は同音で入れ替わったという説明がなされている。
 ただ、総管とは海上の船舶を総合的に管理するという説明もされている。一方で趕は、走る、追いかけるといった意味の字で、どうもつながらないなぁと思ったが、実は趕繒船という船があるようだ。

 林進源編『台湾民間信仰神明大図鑑』では、上のような説明は王必昌『重修台湾縣志』が初出とあった。『重修台湾縣志』は、非常に怪しい出自のテキストデータがあった。信頼できるかはともかく、載せるだけは載せておく。

聖公廟在永康里中樓仔街(神姓倪、忘其名。生長海濱、熟識港道、為海舶總管。歿而為神、舟人咸敬祀之)。康熙三十年、巡道高拱乾建。又一在大東門内彌陀寺左。一在西定坊、曰總管宮、偽時建。一在鎮北坊總爺街。


 これを見ると、府城の周囲にそれぞれ祀られていたように読める。もちろん現在は少なくとも、ここしか知られていない。

 さて、説明が長くなってしまったが、肝心の宮はこの状態だ。もちろんここで拝拝は不可能だ。
 ただし祭神は、別の建物に仮安置されているので、そちらで拝拝すれば良い。その場所は、何のことはない雙全紅茶の真ん前であった。

總趕宮
 左隣の建物に、募金を呼びかける横断幕が張られている。
 この建物も実は宮の一部で、一階には入ることが出来た。

總趕宮
 中には観音が祀られている。
 これまでも、観音を海の神として祀る宮はあった。ここもそういうことなのだろう。

總趕宮
 取り外された門神。塗り直しの作業中らしく、正面の二枚は色鮮やかだが、左脇に色あせた神が写っている。
 この門神は陳寿彝によるもの。彼は台南の祀典武廟や孔子廟、興済宮、また台北の龍山寺なども手がけた人だ。

 正直言えば、こうやって何度も塗り直されると、どこまで陳寿彝と呼んでいいのだろう、という気もする。
 もちろん門神である以上、塗り直されるのは仕方のないことだ。勿体ないからといって、外してレプリカを取り付けるって発想よりは、自然ではないかと思うけどさ。

 さぁここからが問題だ。観音堂とでも呼ぶべきここの見所は、以下の二点の壁画であった。

總趕宮
 どぉぉーーーん、と、どおくまんのマンガのような効果音を加えて眺めるべし。
 『三国志』か何かの絵かと思いきや、なんと少室山の大士が紅軍(共産党)を追い払っているぜ。国民党万歳

※SlyFox氏の指摘によれば、追い払われているのは元軍らしい。確かに検索してみると、紅賊李全を追いやったという話が見つかる(上の絵には「李」の旗がある)。
 対になる絵がアレなので、共産党のニュアンスがないとも思えないが……。

總趕宮
 なんとこちらは、孫文が普陀山で観音の奇瑞にあうという絵だ。まるで雄略天皇が一言主にあったような構図だ。いくら台湾の廟でも、こんな露骨な党讃美は初めて見たゾ。

 雙全紅茶がこんなあからさまなものを奉納したという点にも驚かされる。が、ここまで媚を売らないと、白色テロに遭ったのかなぁとか、いろいろ憶測してしまう。
 21世紀の台湾が、為政者のトップを崇拝の対象にするような社会にならないことを切に願う。
 選挙で選ばれた長すら「王」と化す世界で、それはなかなか難しい願いなのだろうが……。

 そんなわけで、肝心の総趕宮の祭神については、続編を待っておくれやす。

4 件のコメント:

  1. I have not visited this temple in such a detail as you did.

    The painting "少室山大士退紅軍" is based on a novel titled "觀世音菩薩傳". 紅軍 was rebel army in 元朝.

    You can google "少室山大士退紅軍" for more detail.
    That's what I did.

    This temple is under final finishment as I passed by days ago.

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  2. >狡猾的狐狸先生
    總是指摘謝謝。
    如果我檢索了,在「元軍」時牽涉的故事找到了。因為我為旗的「李」字也抱著可疑,能訂正錯兒感到高興。

    我因為不把中文作為母語,你用英語被被寫。
    可是,因為能讀(只稍微)中文,母語請寫我。今後都請多關照。

    (正在寫中文的事和說的事,現在學習…)

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  3. Hi Deroren,
    Your blog is worth reading even to a local like me.
    I am glad to be a little help.

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  4. >狡猾的狐狸先生
    我的Blog的文章,因為時常攙雜著日本的從前的流行語和歌詞等,難讀吧。
    我,被台灣的諸位不笑的那樣,介紹想台南的正確的信息。我喜歡台南。

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