「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」を見ていると、かつて我が家が武侠ブームだった頃を思い出す。まだ台湾に行く予定もなかった2006年頃だ。
当時、CSで「笑傲江湖」を放送していた。もちろん李亜鵬版である。巷では賛否両論だったらしいけど、私は彼が演じる令狐冲がとても楽しかった。江湖の好漢のイメージは、今も彼が演じた姿だ。
……とはいえ、それしか見ずに一番と断定するのもどうか。原書の日本語訳も読んだ上で、当時見ることのできた他の令狐冲と比較しても、やはり李亜鵬じゃねーの、と思う。
まぁ古いバージョンはそれ以前に、全体的に暗い。武侠ドラマそのものが暗さをまとっていたし、どうしても陰陽(正邪)の対比から衣装が黒か白になるという構造的な問題もある。
中央電子台の笑傲江湖は、その辺をようやく脱したものだったのよね。
令狐冲を比較するとか言いつつ、以下はほぼ令狐冲なしだが、当時見た映像の一部など。
たぶん、今となってはレアな1984年チョウ・ユンファ版。これは小師妹と寧中則の母子である。derorenは先に苗乙乙で見てしまったので、小師妹の垢抜けなさに驚いた。
もっとも、チョウ・ユンファ版の凄さは衣装ではないだろう。
ここに映っているのは曲洋。言わずと知れた「笑傲江湖」演奏シーンなのだが、琴から何やら光線が発射されている。
こちらは劉正風。
ちなみに、この場面で流れているのは琴でも簫でもなく、チープな電子音なのだ。
両者の音色はさまざまな光線となって、洞窟を破壊する。
そもそもこの洞窟に、両者は空を飛んで入ってくるのだ。
現在「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」を見ている人ならば、今さらこんな三十数年前の話をする理由も分かるだろう。
そう、人を斬ると爆発するような布袋戯の世界も、こうした武侠ドラマの歴史を見れば必然の流れなのだ。「笑傲江湖」作者の金庸は、こうしたメチャクチャな映像化に腹を立てていたようだが、だから原作重視で、とはいかなかった模様。
だいいち、東方不敗を女性が演じたこと自体、原作からすればあり得ない話。まして、東方不敗と令狐冲の交流など、あるわけがない。
しかし映画でそれをやったら当たったものだから、2000年のシンガポール版、そして最近の新笑傲江湖と、令狐冲の浮気相手みたいな役割が定着している。シンガポール版は、もちろん兜をかぶっているゾ。
1996年の呂頌賢版は過渡期という感じ。1984年版のように無茶苦茶ではないが、地味だ。
これは思過崖に行けと命じられる場面と思われる。
シンガポール版は、すっかり明るいノリだ。といいつつ、冲霊剣法の場面なのだが。
このシンガポール版では、東方不敗が「トントクーニャン」と呼ばれて終始登場する他にも、いくつか原作との大きな相違点がある(エンディングが原作通りのドラマはほぼ皆無なのでさておく)。
藍鳳凰と田伯光をくっつけたのは何なんだよ、と今でも納得できない。
まぁそんな昔話はさておき、「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」は面白いぞ(おそらく別に記事を書くだろう)。グダグダに終わるという武侠モノのお約束さえ回避できれば、言うことなしだ。
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