台湾三日目。この日がもっとも移動距離の長い一日だ。
台北→太保(高鐵嘉義)→北港→嘉義→台南というプランは、北港鎮に泊まりさえすれば全く複雑にはならなかった。しかし北港鎮のホテルはネット予約できないし、時期的に空いているという保証もない(FAX予約はあてにできない)。それに、初めての土地で日本語が通じない環境よりは、勝手知ったる首相大飯店の方がいいなぁ、という判断であった。
ただしこのプランの問題点は、乗り換えの複雑さではない。というか、乗り換えなんて誰でもできる程度のものだ。問題なのは、大きな荷物を抱えたまま北港鎮を巡らねばならない点なのだ。
台湾は、日本ほどコインロッカーが存在しない。台北駅には沢山あるし(ただし場所が分かりにくい)、百貨店なんかにもあるけど、他ではほとんど見かけなかった。
台鐵の大きな駅には行李房(手荷物預かり所)がある。嘉義駅や台南駅にもあるので、深夜に及ばなければ活用する方法はあろう(台南駅は20:00まで)。しかし高鐵の駅ではそうしたサービスを行っていない。そして高鐵の嘉義や台南は、周囲に何もない場所に駅が存在するので、駅の外で預かり所を探すこともできない。
ホテルで預かってもらおうと思っても(宿泊客でない限り普通は断るだろうが)、ホテルすらないのだ。
まぁそんなこんなで、まずは荷物をできるだけ減らして日本を出発した。そして登山用ザックで機動性を確保した。その辺は、derorenがかつて山屋だった強みを活かしている(登山の荷物に比べれば、旅行のそれなんて軽いものだ)。
ザックは基本的に背負うから、盗まれにくいのも利点だ(ナイフで切られたらそれまでだが)。滞在中はむしろhashiのゴロゴロが問題だった。実際、怪しい人が近づいた瞬間もあった。ああいう雑踏の中で一瞬でも手を離していたら、盗まれても仕方ない。
前置きが長くなった。ともあれ忘れないように概略をメモっておく。
朝は、チェックアウトせずに9:00頃にホテルを出る。台湾のホテルは12:00まで使えるから、出発日の午前中も有効利用するのが賢い方法だ。
特に食べに行きたい店もなかったので、目の前の素食の店で食う。素蚵仔煎という謎の料理を頼んだら、カキの代わりと思われる物体が椎茸だった。別に似せてるわけじゃないけどね。感動するほどではないが、まぁまぁの味だった。
食事後にMRTで圓山站へ向かう。時間があるので大龍峒保安宮を拝拝することにしたのだ。
途中で孔子廟の前を通るが、なんと月曜休館で入れず。お廟に休みの日があるなんてとんでもない。というか、孔子廟は宗教施設じゃなくて観光施設なんだな、と再認識した。それなら行かなくてもいいや、と保安宮へ。
保安宮では、入って左に沢山の花や供物が捧げられていた。この日は註生娘娘の誕生日だったのだ。事前に調べたのにすっかり忘れていたが、偶然にも法事の一部に立ち会えたのは幸運だった。
あまり時間もないので、すぐに圓山站に戻る。
高架のホームからは花博会場の様子が一望できる。もちろんまだ建設中。先住民の知恵を建築に活かすという話を、ディスカバリーチャンネルのテレビ番組で見ていたので、ちょっと興味深い。眺めただけではぴんと来ないけど。
ホテル帰還は10:50頃。そこからわずかの間にシャワーを浴びて、着替えて荷物を片付けて、11:45に懐寧飯店をチェックアウト。フロントの奥には、他の客の預かり荷物が大量に置かれていたよ。
で、高鐵台北駅でチケットを買い、なんと12:06の新幹線に乗車できた。駅の内部をある程度知っていたからというのもあるが、やはりホテルの立地は重要だ。
嘉義までの新幹線は自由席。台湾高鐵は時間帯によっては全席指定だったりするので注意しよう(そのうちまたダイヤが変わるそうな)。12:06の便は、自由席2輛だけなのでけっこう混んでいた。
それにしても、高鐵は距離が短いのでじっくり居眠りする暇がない。東京から京都のように、腰を据えて睡眠につとめると乗り過ごしそうだ(嘉義まで1時間ちょっと)。若干うとうとした程度で、嘉義駅に到着した。
駅では一応コインロッカーの類を捜してみるが、もちろんなし。駅前は……と見たら、立体駐車場以外に何一つ建物すらない。早々に諦める(ちなみに、コンビニや飲食店は駅ナカにあるよ)。
さて、高鐵嘉義から北港鎮へは、バスかタクシーということになる。高鐵の座席に入っていたパンフでは、北港までバスで40分と書いてあった。そしてバスは一時間に一本なので、到着時点で30分以上先だった。それならタクシー使えばずいぶん早く着けるだろうなー、と迷う。
しかしトイレに行ったりお茶を飲んだりしていたら、それなりに時間が過ぎた。それに今日は10分を急ぐような日程でもない。なので黙ってバスに乗ることに決めた。
バス乗り場では、しきりにタクシー運ちゃんに声を掛けられる。もちろんみんな「アーリーサン?」と聞くわけだ。北港行バスの前で「ペイカン」と答えたら残念そうだった。嘉義は嘉義でも、高鐵嘉義から有里山ってどれほどかかるんだろうか。鉄道が不通のままだがバスは走っているから、仮に行くとしてもタクシーはないだろうな。
14:15発の北港行バスは、我々二人だけを乗せて出発。そして快調に飛ばし、なんと20分で北港に着いた。ついでに「マーツー」で「パイパイ」と言ったら、最寄りの交差点で降ろしてくれた。うむ、これならタクシー乗らなくて良かったゾ(タクシーでも所要時間はほぼ一緒だったろう)。
そうして降り立った北港鎮は、なかなか栄えている。日本のちょっとした地方都市並みかそれ以上で、田舎の村という感じではない(間違っても都会でもないが)。まぁ実際、ここで「平成の大合併」があれば10万都市ができる程度の人口なので(北港鎮が4.4万、近隣は新港郷3.5万、元長郷3万など)、当然のことかも知れない。台北から直行のバスもあるよ(もちろん時間はかかる)。
ともあれ朝天宮を目指す。この日のために地図は数種類プリントしてきたし、その一つには本日の出巡遶境のルートまで書き込んである。ちょっとした調査なみの体勢だ(大袈裟だな)。
とはいえ出巡遶境(要するにパレード)はゆるい行事だし、今日は気楽に臨もうという算段であった。
しかし朝天宮に着いて、その認識は甘かったことに気付いた。
もちろん中は拝拝する多くの人々で溢れていたが、そこに黄色の服の一団がいたり、踊っているおばさんがいたりする。おばさんは童乩であった。
朝天宮の神々はこの日に町内を練り歩くわけだが、一方で全国の媽祖廟から進香の一団がやって来る。特に朝天宮正門前の中山路(なんでこんな名前なんだ!)は、進香団が入り乱れて時にカオスを呈していた。
忙しい午後になりそうな一方で、荷物を抱えながらの見学や撮影にはどうにか目途が立った(もちろんザックを背負って堂内を巡ったわけではないので念のため)。ちょっとした興奮状態で北港での時間が始まったのは、14:40頃であった。
※後半に続く
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